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ゲーム制作講座column

“二面性”をキーワードに魅力的なキャラクターを考える

「あ〜、暑いな〜。最近は、こんな朝から暑くなって、学園に行くのもめんどくさいよ〜」
「なによ、朝から愚痴? ほんっと、だらしないわね」
「おう、お隣さんで幼馴染のフィリスか。お前は暑くないのかよ?」
「べつに暑いけど、アンタみたいに、だらだらはしないわ」
「ふぅ〜ん、やっぱり優等生は違うなぁ〜……あ、飲み物でも買ってこ。……ああっ!?」
「どうしたのよ?」
「いっけね〜、うちに財布忘れてきちまったよ。なぁ、フィリス――」
「貸さないからね」
「うわっ、なんだよ、ケチ女!」
「誰がケチ女よ!」
「ちっくしょ〜、これじゃあ昼飯も買えねぇよ……どうしよう?」
「……ふ、ふん。なら、コレあげるわ」
「弁当? お前の分はいいのか?」
「ちょっと作りすぎちゃって、二つ作っちゃったのよ。べ、別にアンタのためじゃないんだからね!」
「またまたぁ〜、そんなこと言って、実は俺に気があるんだろ?」
「ばっ、バッカじゃないの!? 誰がアンタなんか!」
「そうだよな〜。それに、俺は学園のアイドル・リディアちゃんのファンだしな! よ〜し、今日もリディアちゃんに会いに行くぞ〜!」
「……バカ」

「はい、カットカット」
「うわっ、なんだ、その冷めた反応!」
「なんだって、こっちの台詞ですよ。どんな大根役者ですか。ハムちゃん、ゲームは作れても役者の才能は無いですね」
「ふぐあっ!?」
「ふふん、まぁ、ハムちゃんじゃ無理でも仕方ないわ。それに比べて、ヒロインを務めたこともある私は、さすがの演技だと思わない?」
「フィリスさんも五十歩百歩だと思いますが……」
「これが後輩からの突き上げ……!?」
「で、久しぶりの講座で寒い夫婦漫才までやって、今日のテーマは何ですか?」
「ふっ、夫婦なんかじゃないんだからねっ!」
「…………」
「無言って、ツッコミよりツラいよ!?」
「えーと……今日は“二面性”をキーワードに、魅力的なキャラクターづくりについて考える講座です」

 魅力的なキャラクターは、いかにして作るのか。ゲームに限らず、漫画や小説など、どんなメディアであろうと重要になる命題です。この講座では以前、連載形式でキャラクターづくりについて書いてみましたが、今回は単発の記事として魅力的なキャラクターづくりについて考えてみましょう。キーワードは“二面性”です。

「二面性をキーワードにしてみたが、なにも裏表のあるキャラクターを創れ、というわけじゃない。意外性や相反することを持たせることで、キャラクターに深みを与えられるのではないか、という話だ」
「たとえば、どんな感じかな?」
「意外性といえば、たとえば不良でワルだと思っていた男子が雨の中で子猫を拾っていた、とかかな。相反することなら、見た目は華奢で小柄な美少女だけど武器は巨大な大剣、みたいなものが考えられる」
「たしかに、単に『不良でワルの男子』っていうより、『雨の中で子猫を拾っていた不良でワルの男子』ってなった方が、そのキャラクターに興味がわくし、お話も作りやすそう
「そうだろう。キャラクターの魅力を生み出す原動力の一つに、“ギャップ”があるのは確かかと思う。今回は、それを“二面性”というキーワードでまとめて、分類・考察してみよう」

二面性:典型像とのギャップ

「突然だが、“萌え”とは何だろうか?」
「愛」
「即答だな!? じゃあ、その愛は、何に対する愛だろう?」
「えーっと、どういうこと?」
「たとえば、“メイド萌え”を考えてみよう。この場合、いったいメイドの何に萌えているんだろう?」
「うーん、やっぱり服装? メイドさんの格好がいいのかなぁ?」
「そうか? じゃあ、メイドの服着てたら無条件で萌える?」
「そんなことないよ! メイド喫茶に入って、『お帰りなさいませ、お嬢様』って言われなかったら、私帰るもん!」
「行ってるのか!? と、とにかく、ならメイドの何に萌えていると思う?」
「うぅん、改めて聞かれると分からないよ!」
「俺は、『メイド』というものに対する自分の中の理想像に萌えているのだと思う」
「自分の中の理想像?」
「そう。メイドのイメージは人それぞれだと思うが、典型的なところでいえば、自分のために一生懸命働いてくれる若い女性、といったところだろう。おしとやか、素直、気遣いが出来る、など他にも色々あるだろう。あるいは、誰かに仕える女性、というライフスタイルそのものに“萌え”るのかもしれない。メイド服、という外見は、あくまでメイドのイメージの象徴なわけだな」
「メイドの服を着た人を見ると、その人にメイドのイメージを当てはめて、妄想して、『萌えぇぇぇぇっ!』ってなるってこと?」
「端的に言えば、そうだ」
「それが、今回の“二面性”の話と、どう関わるの?」
「メイドを例に挙げたが、このようにイメージが定着しているキャラクターは多い。典型像があるキャラクター、と言ってもいいだろう。そういう典型像そのままで行くのも一つの魅力的なキャラクターだが、そういった典型的なイメージから、あえて外すことでキャラクターの魅力はさらに増すのではないか、と考える」
「典型像とのギャップってわけだね。ハムちゃんのキャラクターだと、どんな例があるかな?」
「『To Realize!』に出てきたガブリエルは、良い例だろう。“エルフ”というキャラクターが持っているイメージを、あえて外しにいっている」
「たしかに、エルフって言うと大人しくてクールな性格、精霊魔法が使えるけど炎は嫌い……とか、たしかに典型的なイメージってあるね」
「そうだろう。その典型像に対して、ガブリエルは怪力だし、明るくて活発だし、使うのは炎の精霊魔法だ」
「けっこう、典型像と違う部分でキャラクターが動いたり、お話ができたりしてたね」
「そうだな。魅力的なキャラクターは、それ自体が魅力であると同時に、魅力的な物語を作る力があるのかもしれない。もう一つ、重要な点がある。典型像とのギャップを作ったとしても、あくまで典型像は土台にある、ということだ」
「というと?」
「エルフのイメージから外した設定(怪力、明るい、炎使い)がありつつも、“エルフである”という部分は変わらないわけだな。だから、ガブリエルもエルフの里との関わりなど、“エルフ”であることを生かした設定や物語があった」
「なるほどー……典型像からイメージされるものに加えて、ギャップでさらに魅力を増す……ってことだね!」


・魔法使いだが、得意技は格闘技
・イケメンで優しげな僧侶だが、金の亡者
・有名な大賢者だが、自堕落な生活をしている

二面性:外見と中身のギャップ

「外見と中身に差をつける、というのは、使いやすい手法の一つだと思う」
「たとえば、小さい女の子が大剣を振り回す、みたいなやつだね。さっきの、典型像とのギャップとは違うの?」
「もう少し踏み込んで、外見に注目してみる、といったところかな。典型像と考えるなら、メイドと言えばメイド服、というように服装のイメージが決まっていることが多い。しかし、実際にキャラクターを作るとなると、明るいメイド、大人しいメイド、クールなメイド……というように、バラエティが生まれてくる」
「メイド服、ってだけじゃ差がつかないもんね……どうすればいいのかな?」
「髪形や装飾品、表情、話し方などで差をつけるのが多いだろう。そういう部分も含めて、外見と考える」
「活発なメイドだったら、ショートカットに明るい髪の色、あけっぴろげな笑顔に快活な話し方、って感じかな。……そうか。“メイド”っていう要素は、キャラクターの土台にはなるかもしれないけど、実際にはその上に色々なもの(性格や生い立ち、特徴など)が乗ってきて、一人の“メイドのキャラクター”になるんだもんね。そういうのが合わさってキャラクターの中身になって、外見に出てくるんだね」
「そう。以前の講座では『連想して考える』という手法を書いたが、基本的に外見と中身は一致するのが普通だ」
「たしかに、活発で明るい子ならボーイッシュな格好や髪形をして、まじめな騎士ならしっかりした鎧を着こんで長剣を下げて……みたいに、その人のキャラクターに合った格好をしてるもんね」
「そういった典型的な外見からあえて中身をずらす……あるいは、中身に適した外見から、あえて違う外見にするわけだ。いくつか考えてみよう」


・高飛車お嬢様でゴスロリの格好をした美少女だが、使うのは巨大な戦斧
・ムキムキのマッチョで戦闘でも強いが、趣味はお菓子作り
・ボーイッシュで活動的な格好をしているが、実は読書が好き
・見た目は子犬だが、中身は伝説の大賢者

「こうして考えると、いくらでも出てきそうだね」
「そうだろう。もちろん、いかにもゴスロリのゴスロリ美少女とか、いかにもマッチョのムキムキマッチョが出てきてもいい。それはそれで魅力がある。しかし、このように外見と中身にギャップを持たせることで、キャラクターに新しい魅力を持たせられるだろう」

二面性:魅力的な欠点を持たせる

「ギャップというよりは、ちょっとした欠点を持たせることで、キャラクターの魅力を増すことが出来ると思う」
「たしかに、よく聞く話だね。キャラクターには欠点を持たせろ、って……どうして、欠点を持たせるのがいいのかな?」
「欠点の無い人間はいないからだろう。美形で、頭もよくてスポーツも出来て、お金もあって異性にモテモテで……という完璧超人になってしまうと、どうしても感情移入しにくい。だが、欠点があれば、親しみやすく感じられたり、感情移入したりしやすくなるのだろう
「お話も作りやすそう……完璧超人が簡単に物事を解決しちゃうより、欠点のある人が試行錯誤して頑張る方が、面白いお話を書きやすそうだね」
「もちろん、完璧超人が主人公やヒロインである作品もある。だが、そういう場合は特に意識してそのキャラクターには欠点や残念な部分が付与されている印象があるな」
「そういう所があるから、魅力的なキャラクターにもなるし、お話も作れるのかも……それに、そういうキャラクターって、すごい極端な感じになるイメージもあるね。極端にすごい部分と極端に残念な部分が同居してる……みたいな?」
「いいところに気付いたな。そう、ゆえに『欠点』という部分は、キャラクターの二面性(すごい部分と欠点)を構成すると考えられる」
「欠点を持たせる時って、コツとか気を付けるところとか、あるのかな?」
欠点自体が魅力的に映るものであった方がよいだろう。たとえば、完璧超人の美少女だけど、動物に怖がられるせいで動物とは触れ合えない……というキャラクターを見たことがあるが、こういうのがいいと思う。動物に触れたいけど動物の方が逃げる、という描写になると笑えるし、面白い」
「たしかに……完璧超人だけどギャンブル中毒、とか、平気で嘘をつく、とかなると、魅力的どころか、ちょっと引いちゃうかも……」
「悪役やピカレスク系の主人公なら、それもいいだろうけどな。『欠点がある』『その欠点が面白い』となれば、キャラクターの魅力をもっと引き出せるんじゃないかな」


・才色兼備の美少女だが、超大食いで常に何か食べていないと倒れてしまう
・イケメンで天才的な腕を持つ剣士だが、よく全裸になる
・主人公の前にたびたび現れるが、ドジでいつも自爆する悪役

二面性:性格のギャップ

「性格のギャップ……まぁ、いわゆるツンデレというやつだ」
「普段はツンツンしてるけど、好きな相手の前ではデレ……そのギャップに、みんなやられちゃうわけだね」
「そう。ツンデレに限らず、性格にギャップがあると、実際に物語の中でそのギャップを表現することが出来る。なぜなら――」
性格は行動とつながっているから……だよね?」
「そういうことだ。性格にギャップがあるということは、キャラクターの行動にギャップが生じる。そのギャップが魅力的であれば、それはキャラクターの魅力に直結するだろう」
「行動のギャップと言い換えてもいいかも……どんな例があるかな?」


・普段はスケベでヒロインに怒られているが、決める時はカッコいい主人公
・人前では敬語で話すが、二人きりになると砕けた話し方をするヒロイン
・普段は優しく正義感が強いが、時々心の闇がのぞく少女

「嫌なキャラクターにはなるが、性格のギャップというなら、上の立場の人にはへつらうが、自分より下の相手には暴力を振るう……といったキャラクターなども考えられるだろうな」
「思いっきり嫌な悪役として出すなら、そういうのもありかもね。……こういう、性格のギャップを作る時には、どんな注意があるのかな?」
「性格のギャップが大きくても、それはあくまで一人のキャラクターの中に同居している、ということを忘れないようにしよう。なので、決して二重人格のキャラクターを作る、ということではない(これはこれで魅力的だが、性格のギャップではない)。あくまで一人の人物の二つの面、ということを忘れないようにしよう」
「違う面が同じ人に同居してるから、魅力的となるんだもんね。別の二人の人間になっちゃわないように、根本的な考え方とか土台になる部分はしっかり意識した方がよさそうだね」

二面性:立場のギャップ

「立場のギャップ……つまり、異なる二つの立場を同時にとるキャラクターというのは意外と多い」
「たとえば、どんなのがあるの?」
「昼は学生、夜は魔法少女、なんてのは典型的だろう。ほかにも普段はサラリーマンだが、変身すると正義の味方になる、なんてのもあるかもな」


・普段は学園に通う女子学生だが、魔法少女に変身して悪の組織と戦っている
・本当はお姫さまだが、身分を隠して(普通の人として)街に出ている
・現実では大人しい高校生だが、ネットゲームの世界では最強のプレイヤー

「確かに、言われてみれば多いかも。こういうキャラクターの魅力って、どこにあるのかな?」
「いわゆる変身願望を満たしてくれる、という点はあるんじゃないかと思う。つまり、普段の自分とは違う自分になる、という面白さだな。また、多くの場合、どちらかの立場にいる時は、もう片方の立場の事は秘密になっている」
「たしかに、学園に通っている時は魔法少女の事は秘密だし、魔法少女として戦ってる時は自分が学生ってことは秘密だよね」
「秘密を抱えている……という点が面白さになるだろうし、秘密は秘密の告白とセットになる。自分で言わずに、バレてしまうこともあるだろうが、秘密を抱えている限り、それが明らかになるストーリーも生まれてくる。その中で、葛藤したり成長したりすると、キャラクターもストーリーも魅力的になるのでは、と思う」
「立場の違いによる葛藤、みたいなのもあるかもね。ヒロインの片思いの人が、自分が変身した魔法少女に恋をしちゃうの! 『私がその魔法少女よ!』って言いたいけど言えない、このもどかしさ! う〜ん、青春!」
「確かに、そういうのもあるだろうな。なんにせよ、秘密を抱えている、というのは魅力的なキャラクターの要素の一つなのだろう。その形の一つとして、立場のギャップというのがあるんじゃないかな」

二面性:最弱だけど最強の能力

「特にファンタジー作品では、主人公など、キャラクターが特別な能力を持っていることは多い。この能力も二面性という点から考えてみよう」
「能力の二面性……っていうと、どんなものがあるのかな?」
「分かりやすいところで考えれば、極端なリスクとベネフィットだろう。すごい強力な魔法だが、消費MPが多くて気軽には使えない、とか」
「能力を使うには、対応するアイテムが必要……とかも、ありそうだね。銃で戦うキャラクターで、対応する銃弾を持ってると特別な技が使えるけど弾切れになると何もできない、とか、強力な攻撃が出来るが、攻撃のためには自分の身体を傷つけないといけない(HPを消費する)とか」
「ゲームだと、ある程度ゲームシステムの制約を受けるが、小説や漫画ならもっと自由にできるだろう。特に主人公やヒロインの能力は、この二面性が強調されて『最弱だけど最強の能力』と呼べるようなものが(特にライトノベルで)散見される」
「『最弱だけど最強の能力』っていうと、どんなものがあるかな?」
「魔法が使えない落ちこぼれとされていたけど、実際にはどんな魔法も無効化できる、とか。普段は無力だけど、条件が整うとどんな相手も一撃で倒せる、とか。相手の能力をコピーできるけど、初めは何の力も無い、とか。色々考えられるだろう」
「能力を使って、一気に逆転! みたいな演出も出来そうだね」
「それに対して、サブキャラクターや仲間などの能力は、主人公やヒロインに比べてメリット・デメリットが両極端な能力ではないことが多いな。主人公・ヒロインの特別感を出すためでもあるだろうし、普段は無力になりうる主人公・ヒロインの代わりに戦う役目もあるんだろう」
「うまく能力の差別化がされてるってことなのかな? 小説とかに向いてそうだけど、やりようによってはゲームでも作れそうだね。単にMPを使って魔法を使う、だけじゃなくて、色々な能力を考えてみても面白いかも」
「まぁ、ゲーム、特にRPGなどではザコ戦もあるから、両極端な能力だと、主人公が普段は役立たず……ということにもなりかねない。上手くゲームシステムとの兼ね合いも考える必要があるだろうな」
「逆に、なにかの能力をベースにゲームシステムを考えてもいいかも。魔物を仲間にできる主人公が、捕まえた魔物でパーティを組んで戦う、とか」

例(ゲームで使えそうなもの)
・相手を弱らせないと効かないが、成功すれば仲間にできる捕獲魔法(ポ●モン……)
・敵のHPが大きいほど攻撃力が上がる技(ザコには効果が薄いが、ボスには強力)
・倒した相手の能力を奪って、使えるようになる(だが、初期状態では弱い)

二面性:共感と理想

「最後に、キャラクターそのものの二面性ではないが、共感と理想、ということを考えてみよう」
「共感と理想が……キャラクターの二面性なの?」
「プレイヤーや読者が感情移入する……あるいは、自分とキャラクターを重ねて見る時に、この共感と理想という二面性が重要になると思う。共感は、投影と言った方が正確かもしれない」
「詳しく教えて!」
「プレイヤー・読者が共感できるキャラクター、というのはキャラクターづくりにおいて重要なポイントだと思う。特に主人公やヒロインは、共感できることは必須と言えるかもしれない」
「共感できるキャラクターか……前の講座(『キャラクターの作り方 各論』)でも感情移入できるキャラクターってことで、似たような話をしていたね」
「そう。自分と似た境遇、立場、性格などを持つキャラクターには共感しやすいと考えられる。この『共感』とは、自分とキャラクターを重ね合わせる、キャラクターに自分を投影する、と言ってもいいだろう。そのため、中高生の男子(最近は、もう少し上の世代も含まれるだろうが)を主なプレイヤー・読者として想定しているだろう少年誌系のマンガやライトノベルにおいて、年齢の若い男主人公が圧倒的に多くなるのだと思う」
「別にそうじゃなくてもいいんだよね? 考え方が同じとか、立場が同じとか、共感できる点は他にもいろいろあると思うし」
「その通り。だが、まぁ、分かりやすいのだろうと思う。ファンタジーの世界に召喚される、ネットゲームの世界に入る、異世界に転生する、といった設定が流行るのも、主人公に対する共感=投影がしやすいというのが大きいのだろう」
「なるほど……でも、キャラクター(特に主人公)に共感するのが、キャラクターの一面だとしたら、もう一面は? 二面性がキーワードでしょ?」
「それが、理想という一面だ。キャラクターは共感=投影できる存在であると同時に、自分の理想を体現する存在でもある必要がある
「たとえば?」
「異世界に召喚された男子学生……というキャラクターを考えてみよう。普通の男子学生とすれば、非常に共感=投影しやすい対象だろうが、それだけで魅力的かというと、そうではない。投影しやすい反面、自分と似すぎていて魅力的には感じにくいんだな」
「たしかに、頭がいいとかスポーツが出来るとか、何かすごいと思う部分があるから、他の誰かを魅力的に感じる、ってことはあるだろうね」
「そう。人には誰しも、理想としている自分、カッコいいと思う自分がいる。それは、何か素晴らしい成果を残すことかもしれないし、お金持ちになることかもしれないし、異性にモテることかもしれない。そういった自分の理想や願望を体現してくれるキャラクターというのは、見ていて気持ちのいいものだ」
「とすると……キャラクターは、その二つを持つのが大事なのかな? つまり、自分と同じような人で共感=投影できると同時に、自分が理想とする行動をとったり、願望を反映してくれたりする……それが、共感と理想っていう二面性なんだね」
「そういうことだ。まぁ、それを極端に推し進めると、『普通の男子学生が異世界に行って、特別な力で成功して(無双して)、異性にモテる』という身もふたもないテーマに行きついてしまうが、面白い物語、魅力的なキャラクターは何もそれに限らない」
「女の子が主人公の作品とか、若い男性以外が主人公の作品もたくさんあるし、そういうのも面白いしね」
「そう。『普通の男子学生が異世界に行って、特別な力で成功して(無双して)、異性にモテる』ことが面白いのではない。プレイヤー・読者が共感=自身を投影できる存在であると同時に、自分の理想や願望を叶えてくれる……そういうキャラクターだから魅力的に感じられるんだろうな」


「なるほど〜……二面性があると、なんていうか、キャラクターに深みが出る気がするね」
「そうだな。とはいえ、二面性があるキャラクターばかりでは、それはそれでメチャクチャになってしまうかもしれない。典型的なキャラクターがいる中に意外性を持つキャラクターがいるから映える、ということもあるだろうな」
「たしかに……二面性のあるキャラクターをたくさん出すとしても、違いは欲しいよね。あるキャラクターは外見と中身のギャップがある、あるキャラクターは王道だけど意外な欠点がある……みたいに、ちょっとずつ変えるのも有効かも」
「そうだな。魅力的なキャラクターを作るのは、誰しも大変なものだ。にもかかわらず、最近の作品にとって魅力的なキャラクターは必要不可欠な存在でもある。今回は“二面性”をキーワードに考えてみたが、色々な方法で魅力的なキャラクターを作る方法を模索するのも大切かもしれないな」
「必要不可欠だけど、作るのが難しい……これも、魅力的なキャラクターの持つ二面性かもね」

「ちなみに、リトにもギャップ萌えがあるぞ」
「え? ホントですかっ? なんですか、なんですか?」
「見た目は幼女だけど、中身は72歳」
「幼女じゃないし、中身通りの見た目ですっ!」
「ダメよ、リトちゃん、そんなんじゃ。私がツッコミのお手本を見せてあげる」
「おいっ! 槍構えながら何言ってんだ!?」
「ほら、ハムちゃん。もう一回言ってごらん」
「……み、見た目は幼女だけど、中身は72歳っ!」
「あたしは、心も身体もピッチピチ(死語)だああああっ!!」

グシャアアアアアアアアッ!!

「るはああああっ!」
「…………さすがッス、フィリス先輩……」


今日のまとめ

・魅力的なキャラクターを作るうえで、“二面性”をキーワードに考えた。
・二面性には、典型像とのギャップ、外見と中身のギャップ、魅力的な欠点を持たせる、性格のギャップ、立場のギャップ、最弱だけど最強の能力、共感と理想、がある。
・二面性から見るのは、魅力的なキャラクターを作る方法の一つ。他にもいろいろと模索してみよう。



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