「ハムちゃん、ハムちゃ〜ん! 読者の皆さんからお便りが届いたよ!」
「おぉ、それは素晴らしい! フィリス、早速読んでみてくれ」
「うん! えーっと、『フィリスちゃんかわいいです! 彼女が主人公のゲームを作ってください!』だって! やーん、どうしよう!」
「おい、ちょっと待て! 絶対来てないだろ、そんな手紙!」
「そ、そんなこと無いって。ホントに来てるよ?」
「じゃあ、ちょっと見せてみろ」
「え? や、やだなー、ハムちゃん、見せろだなんてセクハラだよ!」
びりびりびり
「あっ、破きやがった!」
ここでは、皆さんから寄せられた質問にお答えする形で、ゲーム制作のノウハウをお伝えしたいと思います。
なお、質問してくださった方のお名前は伏せている他、いただいたご質問も原文そのままではなく、講座用にまとめておりますのでご了承ください。原則、ご質問いただいた順に掲載しておりますが、類似の内容については一か所にまとめております。こちらもご了承ください。
宗教の描き方にはどのような工夫がありますか?
ご質問を下さった方が仏教系の大学で学ぶ方でしたので、仏教をモデルにお答えします。
工夫として第一に挙げられるのは、『一度噛み砕いて本質を取り出し、再構築する』ということだと思います。仏教にも色々な教えや教訓、人生知があるかと思いますが、おそらくそれをそのまま提示しようとすると取っ付きにくいという印象になってしまうのかと思います。一度噛み砕く、つまり、その教えが言いたい事は何なのか? このエピソードや話を通じて何を伝えたいのか? ということを、自分の中で掘り下げ、簡単な言葉で表現してみるのが大切です。
そして今度は、その伝えたい事を分かりやすく伝えるためにどのような形がいいのか考え、ドラマとして再構築します。この時、究極的には全く架空の宗教として描いてしまってもいいと、個人的には思います。
第二の工夫として、『神は細部に宿る』を実践することです。
これは、登場人物の名前や地名など固有名詞を仏教由来の単語にする、と言ったことや、
仏教的なものの見方・考え方があるからこそ出てくるセリフをさりげなく入れる、といったことが挙げられます。たとえば(キリスト教で恐縮ですが)、『罪の告白と赦し』というキーワードを意識して、登場人物が「俺は……いつかあなたに、赦してもらえるんだろうか……?」と祭壇の前で独白するシーンを作る、といったものが考えられます。
第三の工夫として、仏教を意識した他の方の作品に触れてみることです。
たとえば手塚治虫の『火の鳥』は仏教を意識した作品と言われていますし、『ブッダ』は仏教と直接的に関係のある漫画かと思います。このような作品をただ娯楽として読むのではなく、どのような表現をしているのか、作品にどうやって仏教の考えを取り入れているのか、その作品の中でどうやって仏教を表現しようとしているのか、といったことを意識しながら読んでみると良いと思います。
たとえば、一つの例を考えてみましょう。
(即興で作っているので誤っている点、おかしな点がありましたらご容赦ください)
●テーマ:輪廻転生
死んだらただ生まれ変わるのではなく、生前の行いなどによって何に転生するか変わる。
⇒輪廻転生をテーマに、より良く生きる姿勢を描く
起 |
主人公は目が覚めると魔物になっていた。 |
承 |
やがて記憶にある村を見つけるが、人間だった頃の自分は悪人であり、家族や村人に迷惑をかけていたことを知る。(実は生前、悪事を働いていた人間が魔物として生まれ変わる) |
転 |
ある日、主人公は悪事を働く魔物たちから仲間に誘われる。断る主人公。しかし、その魔物たちが主人公の村を襲う。主人公は村人を逃がす時間を稼ぐため、魔物の軍団に立ち向かう。 |
結 |
村には倒された魔物たちと瀕死の主人公がいた。ヒロインは主人公がかつての夫だったことに気付き、主人公は人間の頃には得られなかった家族との絆を得て、息を引き取る。 |
急ごしらえなので荒削りですが……
根底に『輪廻転生』という考え方が無いと作りえないお話にはなっていると思います。
仲間の"裏切り"をうまく描きたいが、コツはありますか?
私が思うに、裏切りを描くには、
1)裏切りにいたる過程
2)裏切る場面
3)裏切った後どうなるか
の3点をしっかりと描く必要があるかと思います。
1)は、裏切りを決断し、実行するまでにどのような経緯があったのかを描くことです。
それまで属していた集団を裏切るわけですから、考え方の変化・情勢の変化・立ち場の変化などがあると考えられます。これらの変化を描く事が、すなわち裏切りに至る伏線になるかと思います。
伏線については、いずれ一つの記事として書かせていただく予定なのですが、たとえば、『明確に分かる伏線』(裏切る人物が不審な行動する、悩む様子を描く、不利な状況に追い込まれていく、集団の誰かと対立する、など)と『明確には分からない伏線』(その時点では見過ごしてしまうようなセリフ・行動など)を使いながら、その人物が“必然的に”裏切る状態を作ってやる必要があるかと思います。
もし『なんでこのキャラクター、裏切ったんだろう?』と遊び手に思われてしまう場合、事前の描写が足りていないことになると思います。
2)の裏切る場面は、劇的なシーンとして描く事が出来れば十分だと思います。
たとえば、土壇場で裏切る、裏切ることで重要な人物が死ぬ、裏切られた主人公が絶体絶命の危機に陥る、などでしょうか。裏切っても大勢に影響が無いようでは、劇的とはなりません。その人物が裏切ることがとても大きな事件となるように描く事が大事だと思います。
3)裏切った後は、そのキャラクターがどうなるか、を描く必要があると思います。
一般的に、裏切った人物はそれまで属していた集団を離れ、別の集団(しばしば元の集団と対立していた集団、敵国など)に属するようになるかと思います。その新しい集団の中でどのような役回りをするのか、どのように振舞うのか、その集団は裏切ったその人物をどう扱うのか、といった事に注目して描いてみるとよいかと思います。
また、その人物が最後はまた味方になるのか、それとも裏切った報いを受けて壮絶な死を遂げるのか、など、その人物がどうなっていくかも描くべきポイントと言えるでしょう。
裏切る人物がはじめから敵の組織の人間で、こちらの味方のふりをしていて裏切る場合、どのように描けばよいでしょうか?
この場合、裏切る人は味方の組織を騙していることになります。これはイコール、プレイヤーを騙している、とも言えます(プレイヤーも、その人物は味方だと思って遊んでいるでしょう)。ということは、この場合、いかにして『実はこのキャラは敵の組織の人間だったんだよ』という“どんでん返し”を行うか、が大事かと思います(“どんでん返し”についても、伏線に関する記事で扱いたいと思います)。
そのためには、事前の伏線が大事です。その人物が不審な行動をとる、あとから見直すとおかしなことを言っている、その時点で知らないはずのことを知っている、などでしょうか。ただし、あまり露骨にやってしまうと“どんでん返し”する前にバレてしまうので、上手く調節してやることが必要だと思います。
かく乱するために、別の人物(裏切っている人物に気づいてマークしている)を登場させて、その人物が不審な行動をとっている様子を描く(実は裏切りの証拠を得るために部屋に忍び込んでいた、など)、というような手法も良いでしょう。
“どんでん返し”の手法を学ぶには、映画『シックスセンス』がおすすめです。
主人公の過去の悪事などが露見した場合、主人公やそれを知った人の反応を描くにはどんな方法があるでしょうか?
この場合に限らず、登場人物の言動はその人物の性格と密接に連携しています。
たとえば、主人公の過去の悪事がばれた場合、主人公がクールな人物であれば淡々と語るでしょうし、熱血な人物であれば涙を流しながら懺悔するかもしれません。悪事を後悔しているなら、正直に話して謝るかもしれませんし、そうでないなら言い訳をするかもしれません。
どのように振舞うかは、その人物の性格から必然的に導かれます。逆に、ここでどう振舞うかによって、その人物の性格が遊び手に伝わる……という風にも言えます。
またある人物だけ(例えばヒロインだけ)その事実を知らされていなかった、となれば、その人物は周囲に不審を向けるかも知れません。このように状況に左右される場合もあるかと思います。
この時、コツがあるとすれば、性格を説明的に描写しない、ということだと思います。たとえば、かつて冷たい性格だった主人公が過去の悪事について聞かれて答える時、
「あの頃の俺は……冷たい人間だったんだ」と説明的に言うよりも、
「あの頃は……何も疑問に思わなかったんだ」など、そのセリフを聞いて『主人公は当時冷たい人間だったんだな……』と遊び手が想像できるようなセリフにする方がよいかと思います。
あるいは、『主人公は金に汚かった』ことを描くために、貸した金を無理矢理取り立てる主人公の姿を描く、といったように、実際の行動・シーンで描く事も有効かと思います。