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ゲーム制作講座column

あとがきに代えて 〜ゲームを作る、ということ〜

 長かったゲーム制作講座も、とうとうひと段落しました。2年弱をかけて、伝えたいと思っていた私のゲーム制作ノウハウは、ほとんど書くことができたと思います。とはいえ、基本的に一話完結で講座を書いていましたから、あとから書きたくなったなら追加できるでしょう。と言うわけで、終わりと言いつつまだ更新するかもしれません(笑
 でも、まぁ、一度は締めなきゃいけないので、あとがきの代わりとして、書きたいと思いつつも『これ、ノウハウじゃないな』とか『精神論的な話だから、あんまり講座のテーマとマッチしないな』と思って、講座に書けなかった(書かなかった)ことを書いてみたいと思います。

「あぁ……BGMが蛍の光に聞こえる……」
「最後だから、好き放題書かせてもらうぞ」

恐れずに、作れ

『どうして、ゲームを作るの?』
『どうして、有料化しないの?』

 そんな質問を、時々されます。その時に、私は決まって『趣味だから』と答えます。それ以外に、答えようが無いのです。

「作るのが面白いから作ってるんだ。自己満足だ、文句あるか」

 というのが、私の正直な気持ちです。中にはもちろん、フリーゲームからプロの世界を目指している人もいるでしょう。しかし、おそらくゲームを制作する人の多くは趣味でゲームを作っているのだと思います。
 趣味でゲームを作る人間の原動力とは、なんなのでしょうか? 『作る行為そのものが面白いから』というのは、確かに答えの一つだと思います。『感想が来ると嬉しい』のも、答えの一つでしょう。けれど、私は『自己表現』なのかもしれない、と最近思うようになりました。

『私はこんなゲームを面白いと感じる』
『私はこんなアイデアが楽しいと思う』
『私はこんなストーリーに感動する』……

 それを表現するために、ゲームを作っているのではないか、と思います。ゲームがどんなにDLされても私の懐には1円も入らないのに、こんなに苦労して、こんなに自分の時間を割いて、時にはソフトなどにお金を払って、一体自分はどうしてゲームなんて作ってるんだろう? そう考えたとき、『自己表現のために作っている』というのは、なんとなく私に見えてきた答えのような気がします。
 だから、一歩踏み出し、恐れずに作ることが大事だと思います。 ゲームを完成させるのは、怖いです。あまり人に言いませんが、正直私は今でも怖いです。どんな反応が来るかわかりませんし、そもそも何の反応も無いこともあります。人気順でソフトを並べられれば、いやでも自分の順位は分かってしまいます。星の数など5段階評価のような機能をつけている紹介サイトなら、自分のソフトの評価を見せられてしまいます。コンテストに応募すれば、落選することだってあります。もしかしたら、『そもそも完成することが怖い』という人もいるのではないか、とも最近思います。完成してしまったら、自分が大切に温めてきた作品はそこで一区切りがついて終わってしまう、今作っている作品が終わってしまうのは怖い……そんな風に思う人も、いるのではないでしょうか。
 しかし、完成させて公開しなければ、そもそも『自己表現』することさえできません。私は何よりもそれが嫌で、『自己表現したい!』という気持ちが強いために、色々と浮かんでくる怖い想像を乗り越えられるんじゃないかな、と思います。市販ゲームのように売上を気にする必要はありません。新しいことに挑戦して失敗しても、何も痛いことはありません。思いっきり自分のカラーを出しても、誰も文句は言いません。

 だから、一歩踏み出しましょう。作品を終わらせることを恐れず、完成させましょう。自分はまだ未熟だと思っていても、どんな反応も恐れず、世に公開しましょう。きっと、完成させて公開するのが、一番面白い『ゲーム制作』という趣味の楽しみ方だと思います。

継続は力なり

 よく見る格言ですが、フリーゲーム制作でも当てはまると思います。とはいえ、何もせずに時間だけが経過しても、それは力にはなりません。新しい作品に挑戦したり、HPを更新したり、他の人のHPに遊びに行ったり……なんでもいいと思いますが、色々と活動を続けていれば、そのうち顔も名前も売れてきますし、より良いゲームが作れるようになっていきます。私だって、はじめから良い作品が作れたわけではありません。初めて挑戦したコンテストパーク(株式会社エンターブレイン(旧アスキー)がやっていたコンテスト)では銅賞でしたし、その次の作品は落選、次いでまた銅賞、『Pray for You』で銀賞をとり、『-新説-UPRISING』で金賞を取ったところでコンテストパーク自体が終了してしまいました。目標が無くなった……と思いきや、気がつけば、長編作品だけでも『To Realize!』と『木精リトの魔王討伐記』を公開していました。
 そんな経歴を見ればわかるように、私は一作目でいきなり有名になるタイプでもなければ、優れたセンスで超有名になるタイプでもありません。地道にコツコツ作ってきて、ようやく一人前のゲームが作れるようになった……そんな気がします。だから、『継続は力なり』という格言は、『あぁ、その通りだよなぁ』と思うのです。

『自分はこれが好き』の向こう側

 ゲームを作ることを趣味にして、職業病だなぁ、と思うことがあります。ほかの人の作品を、素直に楽しめないのです。ゲームでも、小説やマンガでも、音楽でもテレビでも映画でも、作品を見ていると『自分ならこうするのに』とか『ここ、素敵だな。自分の創作に生かせないかな』とか『みんなはこういうのを面白いと言うのか。きっと○○だから、面白いと言うんだろうな。参考にさせてもらおう』とか、とにかく自分の創作に結びつけてしまいます。まぁ、作品を素直に楽しめないと思うと、もったいないと言えばもったいないのですが、こういうふうに考えることはフリーゲーム制作――『創作』を趣味に選んだ人間として、必要なことなのだと思います。趣味ではなく、プロならなおさらでしょう。
 どういうことか。『受け手』と『作り手』は違う、という意識です。作品を作る人間は、作品を見る人と同じ考え方をしてはいけないと思います。ある作品を見た時に、『面白かった』『つまらなかった』など、感想は自由に言っていいと思います。そして、『受け手』であるなら、そこまででいいと思います。けれど、あなたが『作り手』でいたいと思ったら、『面白い』という個人の感想にとどまっていてはいけません

『面白いと思った。どんなところが、どうして面白いと思ったんだろう?』
『この点は良くないと思う。なぜなら、○○だからだ。だから、それを直すために□□にするべきだ』
『大勢の人が、この作品を面白いと言う。この作品のどこが、どうして、面白いと言われるんだろう?』
『新作を出したら、○○という点が良くないと言われた。なぜ、良くないのだろう?』

 そんな風に、個人の感想にとどまらず、作品を分析する考え方を身につけなければ、自分の『創作の力』は成長しません。特に、作品の良い点を分析する考え方が必要でしょう。悪いところを見つけるのは誰でもできます。そうではなくて、作品の良いところを見つけて、それをきちんと評価できる考え方が重要なのだと思います。
 成長しなくていい、と思うなら、別にそれでも構いません。自分が面白いと思う物を作れば、少なくとも好みが同じ人は面白いと思ってくれるのですから。けれど、もし、あなたが『自分はこれが好き』という自分ひとりの好き嫌いを超えて、より多くの人に面白いと思ってもらえる作品を作りたいなら、成長しなければいけません。そのために、様々な技術やノウハウがあり、ほかの作品から学ぶことがあるのです。
 少なくとも、この講座は、終始、その考えのもとに執筆されてきました。

宿題『中編RPGを作ってみよう』

 最後に、この講座を読んでくれた皆さんに宿題です。
 どんな内容でもいいので、中編RPGを作って世に出してみましょう。お題は自由です。作り方もシステムも自由です。『シナリオ作りの第一歩』で紹介した『フレーム』という考え方に基づけば、だいたい4〜8フレームぐらいの作品です。プレイ時間なら、5〜10時間といったところでしょうか。たとえば、『ひとつの街を舞台にして、3、4個のダンジョンを踏破してエンディング』ぐらいの規模です。
 私は常々、はじめは短編からがいい、と書いてきました。が、最近思うのです。短編を作るのは、逆に難しいんじゃないか? と。たしかに、長くて面白い話を書くより、短くて面白い話を書くほうが(労力はともかく)技術的には難しいです。また、最近のフリーゲームを見ていると、中編規模の作品が多くあることにも気づきました。中編規模の作品は、十分にボリュームのあるシステムを搭載することができ、かつ面白いストーリーも作りやすい長さで、長編ほど膨大な労力も必要ない、一番フリーゲームに向いている規模なんじゃないか……そんな風に思い始めました。
 と、いうわけで(笑)中編規模の作品に挑戦してみましょう。イメージが湧かなかったら、プレイ時間10時間ぐらいのフリーゲームを何本か遊んでみると良いかもしれません。この講座で書いたシナリオ技術も、中編ならかなり使いやすいはずです(特に、ハリウッド脚本式シナリオ術)。

 この宿題が出来た時、あなたは一人のフリーゲーム作者としてデビューしているでしょう。そして、このような講座を読むだけの熱意があるなら、きっと素晴らしい作品を作れるはずです。最後に、ありきたりですが、この言葉を贈って講座の締めくくりとしましょう。


Stay hungry, Stay foolish. ――Steve Jobs



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