「前回、キャラクターとストーリーを一緒に考える、ということを書いたが、少しわかりにくかったようだ、申し訳ない。いくつか例を述べて、補足しよう」
例1
ストーリー:勇者が魔王を倒す王道RPG
⇒主人公1:誰にも期待されていない勇者
⇒期待されていない勇者が機転と才覚で徐々に認められ、
最後には魔王を倒すサクセスストーリー
⇒主人公はすごいと思われていないが、いざと言う時実力を発揮する
⇒仲間になる人物も、期待されていない人物
まとめると……『期待されていない勇者が機転と才覚でのし上がる成功物語』
⇒主人公2:偶然、魔王の力が宿る魔剣を手にしてしまった少年
⇒主人公は、いずれ魔王になってしまう
⇒魔剣を封印し、自分の中の魔王を倒すために旅をするストーリー
⇒主人公を助けようとする人もいれば、殺そうとする人もいる
⇒魔剣の力を使えば非常に強いが、使うほど魔王になっていくシステム
まとめると……『徐々に魔王になっていく少年が、人間でいるために戦う物語』
⇒主人公3:異世界に召喚された機械オタクの高校生
⇒ピンチに陥っていたヒロイン(魔法使い)に召喚された。ボーイミーツガール
⇒その異世界は、機械の敵によって侵略されていた
⇒主人公は機械いじりが得意で、倒した相手の部品から道具を作れる
⇒敵の部品を元に武器やアイテムを作るシステム
⇒異世界の住人にとって機械は未知の存在だが、主人公にはそうではない
⇒主人公の知識で相手の弱点や攻略法を考えていく
⇒機械の兵士を作るAI(魔王)を倒すために旅をする
まとめると……『機械に侵略される世界で機械オタクの高校生が戦う異世界召喚もの』
「このように、ストーリーからキャラクターを考え、そのキャラクターからまたストーリーを考える……という過程を繰り返すことで、キャラクターもかたまり、ストーリーもできていく」
「まとめると……って部分は、作品のテーマって言ってもいい感じになってるね。それに、一緒に他のキャラクターとかシステムとかも考えられそう。でも、こういう作り方をする時に、なにかいい方法ってないの?」
「今回説明する、『連想して作る』というコツが役に立つだろう」
「フィリス、連想ゲームってわかるか?」
「知ってるわよ。つい最近やってたテレビ番組でしょ?」
「……つい最近?」
「何か言った?」
「い、いや、なにも! たしかにテレビもあったが、この場合、ある内容から連想するものを次々挙げていくゲームだな。テレビだと、答えを見た人が答えから連想した内容を解答者に伝えて、解答者が答えを考えるってものだったか」
「そのゲームが、キャラクター作りとどう関わるの?」
「キャラクターの作り方は、まさに連想ゲームだと俺は考えている」
例を考えてみましょう。
ストーリー:魔法全盛の世界で、あえて剣で戦う主人公が悪を討つ!
⇒このキャラクターが剣を使う理由は?
例1)勇者に憧れて剣を使う
⇒実は伝説の勇者の末裔
⇒復活した魔王を再び封印するために冒険する
例2)一瞬先の未来が見えるから剣でも戦える
⇒左右の瞳の色が違う
⇒その力で人から恐れられており、孤独を抱えている
⇒ヒロインと出会って、彼女のために戦うようになる
例3)魔力を扱えない体質で魔法を使えない
⇒仕方なく剣を使っている
⇒ほかの人には無能力者だと馬鹿にされている
⇒実は魔法が効かない体質で、それを利用してクライマックスで逆転する
例4)持っているのが魔剣
⇒魔剣には意志があり、主人公とボケツッコミできる
⇒主人公と魔剣の珍道中を描くコメディ
「これらの設定からさらに性格なども連想できる。例1なら熱血系、例2はクール系のキャラクターになりそうだな。例3なら、『魔法コンプレックスがあって普段はいじめられているけど、ここぞという場面でカッコよく決めるキャラクター』になりそうだし、例4だと『お調子者の主人公と理知的でツッコミ役の魔剣』や『クール系の主人公とおしゃべりで陽気な魔剣』なんて感じにできそうだな」
「決め台詞とか決めポーズもできそう! たとえば、例2を『普段は片目を隠してる』って設定にして、決めシーンでさっそうと髪をかきあげて敵を斬る! みたいな」
「そうそう、そういう連想が大事。特に性格はキャラクターの言動を決定するうえで必ず決めておかなければいけない設定だが、これも単純に作るのではなく、ほかの設定やストーリーから連想して決めたほうがずっと良いものが作れると思う」
「ストーリーと連動して性格を考えれば、お話の最初と最後で主人公の性格が変わっちゃう、みたいな失敗もなくなりそうだね」
こうして連想して作ることは、『オリジナル』なキャラクターを作る上でも大事です。たとえば『左右の目の色が違う』というのはよく見る設定ですが、ストーリーに設定がしっかりと連動していればありきたりな印象を与えません。
さらに重要なのは、こうしてキャラクターを作ることでシナリオとキャラクターが不可分に結びつき、『この主人公でなければ、このストーリーはできない』と言えるキャラクター・ストーリーが作れることです。
「たとえば、『木精リトの魔王討伐記』を見てみよう。あれは、『リト』というキャラクターが主人公でないと絶対に成立しないストーリーになっている」
「木霊って設定とか、魔法修行中で半人前とか、世間知らずだけど時々勇者とか、リトちゃん自身の秘密とか……たしかに、お話の随所でリトちゃんじゃないと成立しない部分がある。……同時に、そのストーリーや場面に置かれたとき、どう行動するかでリトちゃんってキャラクターが決まっているようにも見える」
「そのとおり。キャラクターは、ストーリーの中での言動でしかどういうキャラクターか表現できないという一面もあるだろうな」
このやり方は、主人公だけでなく、仲間になる人物や敵(敵役については、『敵と目的』の回も参照のこと)、主人公を助けてくれるサブキャラなど、様々なキャラクターに応用することが可能です。究極的には、街を歩いているモブキャラを作るのにも応用できます(『街の人の作り方』参照。街の設定=世界観に連動した街の人を作る方法)。
「ふ〜む、意外と難しそうだなぁ」
「そうでもないさ。気づいていないだけで、実はみんな当たり前のようにやっている。『主人公を魔女の女の子にしよう!』ときたら、『魔女といえば箒に黒猫、とんがり帽子だよね。容姿はこれで決まり!』なんて考えるだろう。こういうのが連想して作る、ということだ」
「それぐらいなら、確かにやってるかも……こうしてキャラクターを作れるようになったら、次はどうすればいいのかな?」
「一人のキャラクターを作れたら、他のキャラクターも作っていこう。その際に気をつけなければいけないのは、キャラクターの差別化だ。次回はそれについて考えよう」